・ドライブシャフト、デファレンシャル等が不要になることで、駆動系が簡素化可能となり車両のレイアウト自由度が高まる
・動力の伝道効率が高く、それぞれのモーターを独立して制御可能となる為、車の運動性能をも大幅に向上させる事が出来る
と言う点が挙げられ、電気自動車の駆動方式の中で期待されているシステムである。
今回、三菱自動車ではランサーエボリューションIXをベースに新開発のアウターローター型のインホイールモーターを採用し4輪インホイールモーター駆動を実現した「ランサーエボリューションMIEV」を展示。この車両は最高出力200kw(270ps)を誇り、リチウムイオン電池との組み合わせで、0−100km/hを8秒以下、最高速度180km/hと言う高性能を発揮する。
また本田技研工業のブースでも、リアにインホイールモーターを採用した次世代燃料電池車「FCX Concept」を展示。こちらのモーターは前輪用に80kw、後輪は左右別で25kwとトータルで130kwの出力を持ち、もちろん後輪は左右別々に制御が可能となっている。こちらは最高航続距離560km、最高速度は160km/hとガソリン車並の高性能を手に入れている。
しかし、このインホイールモーターにもその構造上、バネ下重量が重くなってしまい、乗り心地の悪化や、タイヤの接地性の低下による走行安定性の悪化が発生すると言うデメリットがある。このデメリットを解消するのがブリヂストンブースに展示されていた「ブリヂストン・ダイナミックダンパータイプ・インホイール・モーターシステム バージョンII」で、モーター自体が、振動を吸収する装置であるダイナミックダンパーとして機能し、バネ下の振動をモーターの振動が相殺することで、バネ下重量がもたらすデメリットを解消したシステムである。
また、もう一点注目だったのがミシュランブースに展示されていた「ミシュラン・トゥイール」
「トゥイール(Tweel)」とは、英語の"Tire"と"Wheel"からなる造語で、トレッドバンドと伸縮性のあるスポークからなる、一体型のタイヤ・ホイールである。空気充填が不要でパンクのリスクがないのが特徴。また空気入りラジアルタイヤと同じ性能上の利点を持つと同時に、ハンドリング、コーナリング、応答性に影響する横方向の剛性を劇的に向上させている。さらに、トゥイールはサスペンションに相当する特性も持つため、車両側のサスペンションを単純化し、場合によってはなくしてしまうことも可能との事。現在は低速で軽量な車両用であるトゥイールだが、将来は乗用車への応用も研究されていると言う事で、もし実用化が進むと組み合わせるホイールのデザインも現在の物とは大幅に変わってくる可能性が有り、車の足元も随分と様変わりするものと思われる。
今回のショーを見ると、車両が走行・環境・安全性能向上へと進化する中で、ホイールにも新たな性能や役割が求められる時代になっている事が良くわかる。それらの例がすでに実用化されているTPMS(タイヤ空気圧モニタリングシステム)や、ランフラットシステムであり、今後はインホイールモーターであり、トゥイールではないかと思う。
しかしながら、この先も今まで以上に軽重量・高強度・高剛性と言うホイールの基本性能は、高いレベルでバランスさせる事が要求されるのは疑う余地はないだろう。
最先端の技術を駆使し、デザイン性、基本性能をハイレベルで保ちながら、ホイールに求められる新しい機能を付加させていくのが今後、我々ホイールメーカーに与えられた使命であると感じさせられた今回の東京モーターショーであった。
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