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スポーツホイールに求められるものとは何か?もちろん「軽重量」は重要なファクターだがENKEIでは以前より「クローズドコース等でタイムを出すなら軽さだけではなく、剛性も重要」と言う事を力説してきた。
高いボディ剛性や固められた足回り、そして留まることなく進化するタイヤのグリップ力とエアロダイナミクス。これらにより車のコーナリングスピードは飛躍的にアップし、ホイールにかかる負担は益々大きくなりつつある。
これらが生み出す強烈な前後・横Gを受け止める時、剛性の足りないホイールでは「たわみ」が発生してしまい、本来想定した通りのタイヤ接地面を確保することが出来ず、タイヤのグリップダウンを招き、結果として良いタイムを刻むことが出来ないと言う考え方だ。
果たしてこの考え方は正しいのか?
今回はサーキットでのタイムアックと言う、嘘も言い訳も通用しない状況で、この考え方を検証して行こう。

 


今回テストの舞台となったのは福島県二本松市にあるエビスサーキット西コース(全長2,103m)、フラットでタイトコーナーが多いコースだ。
使用するマシンはRE雨宮のデモカー、通称「タイムアタック号」。ボディ・足回り・エンジン全てにおいてハイレベルな仕上がりのこのマシン、装着タイヤにはタイムアタックマシンご用達とも言えるADVAN A-048(255/40R17・ミディアムコンパウンド)を使用し、今回のテストには持ってこいの車両だ。
そして、ドライバーにはスーパーGTに「雨宮アスパラドリンクRX7」で参戦中の井入宏之選手を起用、プロドライバーならでは的確なマシンコントロールとインプレッションのフィードバックが期待される。


 



エビスサーキット西コースレイアウト図






テスト用のホイールにはRPF1(17x91/2J/OFFSET18/H-P.C.D.5-114.3)の市販品(重量7.52kg)と、市販品から各部を薄肉化し意図的に剛性を落とした低剛性タイプ(重量7.20kg)を使用して、フロントにそれぞれのタイプのホイールを装着しタイム計測とフィーリングチェックを行なった。

Aタイプ(シルバー色)    
市販品    
単体重量・・・7.52kg    
   
Bタイプ(ブロンズ色)    
市販品ベースに各部の薄肉化を実施    
意図的にホイール剛性を落とした    
単体重量・・・7.20kg(Aタイプ比較で-0.32kg)
 

 

 

 

まずは午前中1回目の走行。井入選手にはテストの内容は告げず、中古タイヤでセッティング確認後、Aタイプ(市販品)→Bタイプ(低剛性タイプ)の順番で、いよいよタイムアタックを開始!

 


フロントAタイプ(市販品)での計測タイム    
路面:ドライ    
LAP
TIME
1
1’00”20
2
1’00”08
3
1’00”08
4
1’00”02※
5
1’00”88
6
1’01”15
※ベストタイム 


 
 
   
フロントBタイプ(低剛性タイプ)での計測タイム    
路面:ドライ
LAP
TIME
1
1’00”84
2
0’59”93※
3
1’00”94
4
1’00”80

※ベストタイム

タイム的には低剛性タイプの方が出たがドライバーからは
「Aタイプ(市販品)の方がバランスが良く、乗っている感じは良い。Bタイプ(低剛性タイプ)の方は舵角が多く入ってしまい反応が少し鈍い感じがする。最終的にベストタイムが出たのはBタイプ(低剛性タイプ)だったが、他の車に引っ掛かったりしていたから、感覚的に「イケる」と感じたのはAタイプ(市販品)の方であった。またBタイプ(低剛性タイプ)の時にリアのトラクション不足が感じられたが、これは単純に周回を重ねた事によるリアタイヤのタレが原因かもしれない。ホイール重量の差は特に感じられなかった」
と言うコメント。フィーリング的には剛性のある市販品に良い手ごたえを感じていたようだ。

 


そして午後から2回目の走行。今度は走行前に井入選手にテストの内容を伝え、午前中と同じ順番でタイムアタックを開始。

 

 
フロントAタイプ(市販品)での計測タイム    
路面:ドライ
LAP
TIME
1
1’00”30
2
0’59”70※
3
1’00”10
4
1’00”60
5
1’01”30
6
1’00”36
※ベストタイム

 
   
フロントBタイプ(低剛性タイプ)での計測タイム    
路面:ドライ
LAP
TIME
1
1’01”13
2
1’00”44※
3
1’00”76
4
1’00”54
5
1’01”00
※ベストタイム
 

今回は剛性の高い市販品がベストタイムをマーク、しかも今日一日を通してベストタイムが出る結果に、ドライバーは
「午後はテスト内容を聞いてからの走行だったので意識して走ったがコメントとしては、午前中と同じでやはりAタイプ(市販品)の方がフィーリングは良い。Bタイプ(低剛性タイプ)はコーナーリング時、最後に「グニャ」となる感覚があるので舵を当てなおしたりと言う余分な操作が必要になる時がある。」
とコメント。

 

 


 


今回のテストでのベストタイム比較では
市販品で0'59"70
低剛性タイプで0'59"93
と実にコンマ23秒の差が見られた。さらに注目すべきは走行後のドライバーのコメントだろう。低剛性タイプでは2回の走行でともに市販品と比べてフィーリングの悪さを訴えており、これによりホイールの剛性はタイムだけでなくフィーリング面でも走りに大きな影響を与える事が証明されたと言える。

つまりスポーツホイールの性能は軽重量と高剛性と言う、相反するファクターをどこまで高いレベルで両立できるか?と言う事になる。
それには数々のレース参戦で培った経験が重要になり、その為にもENKEIは今までも、そしてこの先もモータースポーツへ果敢に挑戦し、そのノウハウを市販品へ惜しむことなくフィードバックして行くだろう。

最近いつものコースで何故かタイムが伸びない・・・セッティングがイマイチ決まらない・・・と悩んでいるタイムアタッカーの皆さん。これを機会に今まであまり注目される事の無かったホイールの「剛性」に目を向けて見ると、また新しい世界が見えてくるかもしれない。

 

 

 

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